仲宗根正順
null

null

null

null
null

1994年8月の『読売新聞』に安黒正流が「アート前線」を書き漫画家の鳥山明の世界展についてふれている。
□それは美術館が漫画と小・中学生のために開放されただけでなく、時代の大きな変化を遅れた中高年に信じさせ、意識の変革を迫るインパクトを持っている。(略)手塚治虫以後の日本の漫画文化の充実によって、しばしば漫画は文学だとか、美術だとかいわれている。一段低い表現媒体とみられていた漫画が、高級な芸術とされる文学や絵画を追い越す勢いを強調する際は、おもしろいかもしれないが、正しくは漫画は漫画であるというべきであろう。(略)
かつて東京国立近代博物館が手塚治虫展を開き、兵庫県立近代美術館が水木しげると日本の妖怪展を開いて、美術館での漫画展示に道を開いた。今回もその流れを受け継いでいるものの、鳥山はまだ30代であり、現在も連載中の漫画を取り上げて新鮮だ。
そして、現代文化の問題として取り組む視点もある。漫画は、雑誌、テレビ、ゲームソフトを舞台に展開するマルチメディア時代の花形。そこに、美術館もメディアの一つとして、遅れながらも加わる形をとっている。
それでも、雑誌やテレビなどのメディアでは、漫画の面白さや美しさが、日常的な娯楽として消費されるだけなのに対し、展覧会はそれを、批判的、総合的に考えることを求める。美術館は情報化社会に流されない場に位置する。だから、美術館が鳥山明のマルチメディアの世界に参加することの意義もある。
メディアとしての展覧会と、表現としての漫画が結びついた時、情報化時代の芸術のジャンルの再編成などの考える手がかりも生まれてくる。

null
平敷善憲
null

null