石川正通は「未来派」でもある。岡本太郎も「未来派」だか、つまり今、現在の退化した思想風土を見通している。次は年代不明の正通からの暑中見舞である。

〇石川正通「暑中お見舞申し上げます」
会社があって社会の無い国では
家屋(ハウス)だけ増えて家庭(ホーム)が減ります
十九世紀は自然科学の世代にのし上がったが
蓑虫人間共は宗教や哲学の蓑の中に隠れて
二十世紀は不自然科学の世代に転落しました

この辺で文明の質と方面を革命しないと
四十五億年まで折角年を取った人類は
広島ピカドンの百万発の原水爆を抱いたまま
二十一世紀は自然科学の時代になって自爆し
動物の退化した人間の姿が露呈されます

八紘一宇の夢が薄倖一雨の雫と化し
大詔奉戴日が大傷繃帯日になった
大東亜太平洋戦争を回顧し反省して
有事立法が憂時立砲にならないように
元号法制化が元号砲声禍を招かないように
朝永振一郎と赤提灯の下で一杯やりながら
石川正通はノーメル平和賞を待っています


先輩追憶
智と仁と勇の源これやこの奇しく尊き出合ひなりけり
歌と絵と書と医の多才正忠は那覇の生みたるダビンチにして
さすらひつ迷ひ込みたる文学と心中せしはビヨン積宝
病み臥せど少年の日を偲ばんと桑の実積みし当間重慎
遊ばして来たかと男の表象にさわりしといふ当間重禄
兆民の一年有半読破せし那覇区の区議の石川正延
布袋腹に酒杯乗せて踊りたる麦門冬の珍芸懐ふ
酒宴にて飲まずも酔ひて谷茶前の珍舞踊りし大城朝太郎
医と酒に那覇を照らせしコンビ祖慶実徳浜松哲雄
蛇皮に乗せ八重山節のサワリ弾く花城永渡の笑顔目に見ゆ
島袋源一郎の蛇皮の音に心奪はれし下村海南
那覇市長又吉康和の祝宴に折口信夫坐して語らず
教養と体験織り混ぜ解き解きし太田朝敷の般若心経
沖縄の香気漂ひし名文は当真嗣合の大言小言
沖縄の表象カンパチ誇りたる石川善盛文吉のをぢ
糖通の伊仲浩に菊判の著書一つあり誤植多けでど
顔長く馬顔と号し大衆と共に歩みし伊江王子かな
地中海のただなかにしてすめろぎの誕辰寿(ほ)ぎし漢那提督
髭を撫デ手を握りしめ学問の外を覗きし伊波文学士
参事官岸本賀昌も期待さるる人間像の一人なりけり
台湾の鉄道ほとんど敷きしてふ照屋宏も泉崎人
実の入らば頭垂れよと稲の穂をモットーとせし高良隣徳
久茂地なるアンマー学校を二高女に育てあげたる島袋全発
開南の雄図抱きて育英の旗を樹てたる志喜屋孝信
婦徳こそ守礼之邦の母胎ぞと子女はぐくみし川平朝令
琉球の猥歌愛でしは空手道中興の父冨名腰義珍
わが家に巻藁を建てしみじみと古武道説きし本部サールー
剛柔流宮城長順さかしくも怪力乱神語らざりけり
カマースー・ジラマー・アサギー・町ヌウター天真爛漫神にかも似む
いくさ果て地球削りて首里三平那覇四町にも消えし小路小
ここだくの学徒散華の古里に洋行をして鬼哭聞きしも
さにつらふいもの前髪偲ばるる福木の影も今はあらなく
初恋の胸をこがしてさまよひし小路消したりこちたきいくさ
文語歌を新仮名をもて書く馬鹿の消ゆるを祈る沖縄歌壇に