辺野古新基地NO

私は1997年8月の『敍説』に「雑誌『おきなわ』総目次」を発表した。その中の執筆者に国場幸太郎という名前に興味を持って調べたことがある。何故なら沖縄財界の国場組の国場幸太郎と同名だからである。もとより政治運動に関心が無かった私には政治的論争など知る由もなかった。今でも私は政治的発言は弟・栄仁にさせている。偶々手許に森秀人の『沖縄怨歌・崩壊への出発ー甘蔗伐採期の思想』(現代思潮社1971年12月再版)がある。その中に□わたしが糸満に主眼を置いたのは、那覇で瀬長亀次郎にあって、この、沖縄ははえ抜きの闘士との話しあいに失望して、より辺境に目を注いだ結果であった。わたしの予測は、半分的中し、半分はずれた。というのは糸満ではより自由な雰囲気で、たとえば安保闘争について、あるいは共産党について、話すことができたからである。すでに当時の人民党は反日共系の国場幸太郎をはじめ、幹部クラスの数十名を放逐し、共産党との連携を強めていたが、下部ではもっと流動的であった。たとえば、糸満の人民党とそのシンパサイザーたちの集会では若者たちの大半は、わたしの反日共の論理を素直に受入れて幹部と対立したいた。と国場幸太郎の名が出てくる。

続けて□わたしは、しかし沖縄を去るにあたって、不吉な予感をまぬがれなかった。8年後の今日、わたしにははっきりわかったことは、沖縄ではついに生まれることのなかった思想についてなのだ。沖縄は、アメリカとニッポンのために犯されたが、沖縄の思想は、ある種の加担者たちのために虐殺され、死産児としてわれわれの眼前に横たわっている。わたしはただそうした加担者たちをならべたて、かれらが抹殺したものの怨歌をつづるだけなのである。わたしの『甘蔗伐採期の思想』という本はこうした加担者たちによって抹殺されつづけた本である。その証拠はいくらでもある。中野好夫が所長をしている沖縄資料センターでは、わたしの寄贈したこの著述をいちはやく焼却した。以後、この資料センターのいかなる書目にものったことがない。中野好夫編『沖縄問題を考える』(大平出版社)という破廉恥きわまる本が1968年に刊行されているが、これは一種の沖縄問題のハンドブックとして作成され、戦後出版された沖縄関係の書籍や資料はもれなく収録されているにもかかわらず、私の本は名すら出てこない。ちなみに、この破廉恥きわまりない書物の共著者たちは、新崎盛暉、石田郁夫、井上清、木村禧八郎、霜多正次、新里恵二、高橋実、中野好夫、星野安三郎、宮崎繁樹、宮里政玄、森田俊男である。(略)新崎盛暉も、もっとも悪しき沖縄問題評論家のひとりである。彼は前出の沖縄資料センターに所属し、沖縄問題に巣を作って、沖縄問題を喰い物にしている者たちにつながっている。・・・・・あとがきー(略)沖縄では新川明ら少数の自立主義者がいて、いぜんとして困難な状況を斗っているが、近年とりわけ注目されるのは沖縄芸能者の世界からの自立論の多出である。 1971年12月

さて森秀人氏は沖縄に何時来たのかを、新城栄徳作成の「来訪者略年表(1945~72年)」(『新沖縄文学』№94所収)に、1962年3月に来沖、1963年4月には『甘蔗伐採期の思想』を現代思潮社から出している。『戦後初期沖縄解放運動資料集』3巻に『日本読書新聞』の森・新里・国場論争が収録されている。先ず1963年2月の森秀人「ひき裂かれた歴史」で比嘉春潮・霜多正次・新里恵二『沖縄』を批判。それに新里恵二が「沖縄をどう考えるか ”新沖縄学”を樹立せよ 差別と偏見は日本社会の構造と不可分」で分裂ではなく一致の方向へと批判。新里・森の論争が、国場幸太郎が森を擁護したため新里・国場の論争へと展開する。

森秀人 もり-ひでと
1933- 昭和後期-平成時代の評論家。
昭和8年4月15日生まれ。昭和33年三一書房の評論募集に入選。35年行商人,零細企業労働者などをあつかったルポ「現代日本の底辺」(共著)を刊行。38年「思想の科学」編集長。月刊「七宝芸術」編集長をへて,評論活動に専念する。考古学,民俗学関係,釣りなどに関する著作がある。東京出身。早稲田高等学院卒。本名は秀男。→コトバンク

1974年11月『青い海』37号<特集・戦後沖縄の重要論文集> 森秀人「甘蔗伐採期の思想」(解説・岡本恵徳)

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写真右から新城栄徳、国場幸太郎氏

1974年11月『青い海』国場幸太郎「沖縄の日本復帰運動と革新政党(上)」/解説・新崎盛暉
1974年12月『青い海』国場幸太郎「沖縄の日本復帰運動と革新政党(下)」



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国場幸太郎氏歓迎会

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国場幸太郎氏を囲んでー左から新城栄徳、国場幸太郎氏、後方左から鳥山淳氏、森宣雄氏、福地曠昭氏


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2013年12月23日 タイムスホール 森宣雄・鳥山淳編著『「島ぐるみ闘争」はどう準備されたか』出版記念シンポジウム 


比嘉康文氏と謝花悦子さん


鹿野政直氏、由井晶子さん


写真左から川満信一氏、糸数慶子さん、三木健氏


不二出版の小林淳子さん、新城栄徳