1937年9月 『沖縄県人事録』沖縄朝日新聞社「比嘉榮眞」
1943年1月 月刊『文化沖縄』第4巻第1号 
病歴・・・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・・・・44
○此の稿は勿論未完成の儘である。嘗て医師会事業として提唱した問題である。而して今度は私が3,4年間に集めた分だけを書いたものである。只手付けの一端を披瀝しておけば、会員各位の記憶を呼び起こして以って応援も多からんことを希望して止まない次第である。
 1、正月 自粛の年、国民生活を出来るだけ切り下げて行く決戦下に於いて、物の不足は漸く馴れて、お正月といへども昔みたい様に暴飲暴食するといふ事はないと思ふ。が未だ所謂お正月気分といふものがあって多少とも弛みが出る。その隙に色々の病気に犯さるるものである。


1943年2月 月刊『文化沖縄』第4巻第2号 
愛国百人一首評釈・・・・・歌壇諸大家・・・・・・・2
琉球使節を歌へる歌・・・・林 秀雄・・・・・・・・・6
護国の神々に仕ふ・・・・・・仲村渠政権・・・・・・7
身邊小話・・・・・・・・・・・・・・長田紀秀・・・・・・・・9
随筆三題・・・・・・・・・・・・・・喜久川鼎・・・・・・・11
歴史と命魂・・・・・・・・・・・・・高良忠一・・・・・・15
琉球とおもろ双紙(和歌)・・山口由幾子・・・・16
病歴(二月)・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・22


比律賓群島の糸満漁民・・・比嘉 榮・・・・・・・27
名士の演説振・・・・・・・・・・・伊地 啓・・・・・・・30
南洋通信・・・・・・・・・・・・・・・大宜味朝徳・・・・32
労務雑記・・・・・・・・・・・・・・・山城興純・・・・・・33
くすりを求めて(1)・・・・・・・・久場仙眼・・・・・・36
方圓録・・・・・・・・・・・・・・・・・・新崎盛珍・・・・・・40
療園四年・・・・・・・・・・・・・・・・松田並子・・・・・・44

1943年3月 月刊『文化沖縄』第4巻第3号 
病歴(3月)・・・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・37
○2月からの余勢は流れて先月からの流行は引き続き依然として顕はれてくる。陽気がポカポカと暖かくなり出して街路の黄塵が吹きまくって、相変わらずノド、鼻カゼが多く安魏那が多い。


1943年4月 月刊『文化沖縄』第4巻第4号 
病歴(4月)・・・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・36
○気温と脳ー梯梧の花盛りー 陽春4月ー誰れかれの別なく自然と共に心が浮き浮きしてくるものである。而してこの春になると脳の変調が来て脳神経系統の病気が多くなる。其の理由は気温が上昇する関係である。気温が上がると人体皮膚の下の血管がフクランで来る。それと同時に頭蓋の内の血が降りてそれに因る刺激症状を起こすもので「フルチ」「ハンゲーイモノ」(微毒)等が続発してくるのもこの期節で、又神経痛、ロイマチス等もよく再発してくるものである。

1943年5月 月刊『文化沖縄』第4巻第5号 
病歴(5月)・・・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・24
○昭和14年、15、16年は麻疹が続々と流行して、今月は正に猖獗を極めている時期であった。而して其当時死亡率も多かった様に感ぜられた。昔から疱瘡は器量定め、麻疹は命定めといわr、これから暑気に向かって行くと特に本県では死亡率が多くなる様である。風疹、暑さに向ふてチョイチョイ流行るものにハシカとまぎわらしい風疹といふものがある。俗に「三日ハシカ」とも称へられ、方言で「台湾イリガサ」ともいわれて親御サン達をして、よくまごつかしめるものである。又大人にも罹ることがあって、よく辻町の女子連中に見うけられる場合が多い。

1943年6月 月刊『文化沖縄』第4巻第6号 
病歴(六月)・・・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・27
○これから愈々南島は本格的な夏に入るのである。私の友人県の農林技師をしていた方の話によると、本県は気候と土地の関係上6,7,8の三ヶ月間はどうしても青野菜類は発育し難いとの事である。これによって此季節にはややもすると青物不足の所謂「ヴィタミンC」欠乏症とか又は野菜物に含有する「ヒスタミン」が無い為に脚気の様な胃腸障碍を見る事が多い。

1943年7月 月刊『文化沖縄』第4巻第7号 
病歴(七月)・・・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・30
○盛夏・・・・・これから愈々茹る様な暑気が続いて来る。これから吾々は喝を覚えることが甚だしく、水を、特に冷水を要求する事が多くなる。これに因って自然に口からの病気が急に増えてくる。されば最初に先ず「真夏の衛生と」しての三か条を挙げて見たい。(1)蝿の駆除 (2)水特に飲料水の選択 (3)指尖の清潔


1943年8月 月刊『文化沖縄』第4巻第8号 
病歴(八月)・・・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・28
○相変わらず感冒が多い炎暑の最中で而かも一番暑い月である。東京其他ではめったにこういふ事はない筈である。本県では如何なる月でも風邪は多い。一つは気候の不順なることも原因となるだろうが、今一ツは県人一般に咽頭が悪い関係もある。先天的に即ち遺伝的(素質)に咽頭が悪く且つ之を保護する含嗽といふことを等閑視している全て風邪といふものは其の名前の如く「ノド」「ハナ」から入るものだといふことを注意すれば含嗽は何よりも真っ先に実行すべき事柄である。
1943年9月 月刊『文化沖縄』第4巻第8号 
病歴(九月)・・・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・30
○残暑の候より「新西ミーニシ」といふ季節風が吹く。即ち気候変わりに移るのである。気候変わりには必ず風邪は伴ふものであるが、而し只水っぱなをたらすだ丈に止る。此季節に「ユジナ」(疫)即ち鷹渡来にちなむ「タカバナシチ」が流行する。俗に鷹の小便といふてチラチラと小雨が降って来る。子供等がそれに濡れて知らず知らずに罹る「カゼ」である。
1943年10月 月刊『文化沖縄』第4巻第10号 
病歴(十月)・・・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・15
○九月と殆ど同じ気候で、又同じ様な病気が引き続き多く見られる。朝夕は多少涼しくなるが相変わらず「ミヅツパナ」と「ノドカゼ」が多い、又「シブリ腹」も多い。

1943年11月 月刊『文化沖縄』第4巻第11号 
病歴(十一月)・・・・・・・・・・・・・・・比嘉榮眞・・・・・・18
○此月から12月にかけて、生理的に実に良好なる月である。十月の末頃から十一月一ぱいと尚十二月にひいて俗に「アチハテ十月」といはれて、社会一般に閑散期である。医業も割り方隙になる時である。何しろ気候はよくなるし、人全てが食欲が増進して健康の秋は近づいてくるのである。大根は出る。菠薐草其他青野菜の出盛る月である。大抵の慢性疾患も一様に良好に趣いて自然に病者も少なくなる天高く馬肥ゆるの候である。